アンガーマネジメント専門家の丸山啓太です。前回は怒りの正体は「べき」で、自分が信じている理想の「べき」が目の前で裏切られた時に怒りが発生するというお話をしましたね。毎回の記事で触れている通り、怒りは人間に備わった基本的な感情。怒ること自体は何の問題も無いわけですが、イライラが続くと自分も周りも疲弊してしまいます。
というわけで、今回は「怒りの正体とは?」の2回目。
怒りの原因になっている、「べき」との付き合い方について解説していきたいと思います。
そもそも「べき」と付き合うのは難しい
簡単に言うと「べき」と上手に付き合えれば、怒りとも上手に付き合えるようになります。しかし、「べき」と上手に付き合うのは簡単ではありません。理由は主に3つあります。
1、「べき」は全部正解
まず第一に、「べき」は全部正解なんです。少なくとも「本人」にとっては。
人は皆、異なる環境で育ち、その中で様々な「べき」を身に付けていきます。例えば夫が「男は台所に入るべきではない」という「べき」を持ち、妻が「夫も料理をすべきだ」という「べき」を持っていたとします。お互いに真逆のべきを言っているのですが、お互いにそういう環境で育っていますから、一概にどちらが間違いとは言えません。2、「べき」は程度問題
例えば妻が夫に「ちゃんとやって!」と言ったとします。この「ちゃんと」いうのは人によって受け取り方がだいぶ異なります。夫はちゃんとやっていると思っているのに、妻にとってはちゃんとやっていない。お互いに「ちゃんとやるべき」だと思っていても、「べきの程度」が違っているとなかなか噛み合いません。
3、時代・立場・場所によって「べき」は変わる
時代というのは、昔は「妻は夫をたてるべき」という考え方が多くあったが、今は「夫と妻は対等であるべき」という考えが一般的になった…というようなこと。立場というのは、妻の立場と母の立場、娘の立場で考え方が変わる…というようなこと。場所というのは、エスカレーターに乗る際、福岡では「左に立つべき」で、大阪では「右に立つべき」と考えられている…というようなことを指します。
以上の理由で「べき」と付き合うのはとても難しいのです。
ではどのように考えれば「べき」と上手に付き合えるようになるのでしょう?
自分の中にある「怒りの境界線」を知る
下の図のように、皆さんの心に三重丸があると想像してみてください。
一番内側の円は、自分と全く同じ「べき」のゾーン。
「怒らない」ゾーンです。
二番目の真ん中の円は、自分とは少し違うけど許せる範囲のゾーン。
そのため、ここも「怒らない」ゾーンです。
そして三番目の外側の円。
ここは、自分との違いを許容できないゾーン。
つまり「怒る」ゾーンです。
初回の記事でも「アンガーマネジメントとは怒らないことではない、怒って良いんですよ」とお伝えしました。ですから、三番目に入ったものについては怒っても構わないんです。ただその時に、二番目と三番目の境目…「怒りの境界線」がハッキリしているかどうか?ここが重要になってきます。
続いて、「べき」と上手に付き合うためにこの三重丸を使ってやってみて欲しい「3つの努力」があります。
1、① ②の円をできるだけ大きくする努力
・相手の価値観(べき)を受け入れる。
・「へー、そうなんだ〜」「そういう考え方もあるんだね!」と関心を持つ。2、① ②の円を安定させる努力
・円は機嫌によって大きくなったり、小さくなったりする。
・機嫌で怒らず、自分なりの「ルール」を決めて怒る。3、円を人に見せる努力
・お互いのべきを見せ合う。
・紙に書き出すなど、「可視化」できるとなお良い。
この3つを意識して行動する内に、「べき」と上手に付き合えるようになっていきます。
そもそも変えがたい「べき」という存在。
自分を変えていくことに難しさを感じる人は多いでしょう。
しかし、物は試しです。
「べき」を制する者は怒りを制す!という気持ちで、できそうなことから取り入れてみてほしいなと思います。
今回はここまで!
次回は怒りの性質についてのお話をお届けします。お楽しみに!
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おせっかい隊:丸山 啓太(まるやま けいた)
福岡市出身。(学歴:金山小学校⇒梅林中学校⇒城南高校⇒福岡大学)
2000年より10年間、株式会社リクルートに在籍し、主に「タウンワーク」の企画営業を行う。2007年には「タウンワーク久留米・鳥栖版」の創刊にリーダーとして参加し、全国で最優秀リーダー賞を受賞する。その後アンガーマネジメントに出会い、マルプロを設立。子育て支援や良好な人間関係の構築を応援すべくセミナーや講演会を開催中。
趣味はソフトテニスで競技歴30年。過去には国民体育大会に出場経験あり。今でも全国津々浦々の試合に参加し、青春真っ只中!そのおかげで、いまだに独身(笑)
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