まったくの他人が夫婦になり、やがて親となって子を育てる。そのこと自体が奇跡なのに、どうして“暴力”を選ぶのだろう。なぜ、家族全員が傷付いて悲しんで離れ離れにならなければならないのだろう。家族問題の児童虐待やDVの根本的な問題に気がついたこと。それが「母子サポートのソーシャルワーカー」を志すようになった私の原点でした。

「ママ」たちに何かが起きている!?

私は独身です。結婚経験もなければ、出産・子育て経験もありません。

そんな私が、多くのママの応援団になりたい!と思うようになったのは、「ママが幸せだから、赤ちゃんも家族もみんなが幸せになる」という事実を知ったからでした。

 

きっかけは今から10年ほど前。
メディアで取り上げられることが増えていた「児童虐待」という社会問題を大学の研究テーマに据えたことに遡ります。

児童虐待とは、児童(18歳に満たないもの)の保護者や周囲の人間が、児童に対して行う心理的・身体的・性的「虐待」や、ネグレクトと呼ばれる「育児放棄」のことです。今も月に数回幼い命が虐待によって命を奪われている現実があります。また、虐待死の最多年齢は「0歳の赤ちゃん」であり、加害者の第1位が「実の母親」という惨状です。

 

家族なのに…お母さんなのに…なぜ我が子を!?
赤ちゃんが生まれてきてくれた時には、お母さんも幸せだったはずなのに…。

 

課題意識や疑問が渦巻く中、当時の私は「家族問題」をテーマとした研究を黙々と進めていきました。
そしてその中で、児童虐待の加害者である母親の多くが、配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力「DV(ドメスティック・バイオレンス)」の被害者であるという今まで考えもしなかった現実を突きつけられました。

ママが幸せじゃないから、虐待が起きている…?

調べていくうちに、産後は夫の育児不参加などを理由に、夫婦間に亀裂が入ったり家庭がギクシャクしてしまったりすることがあることや、妊娠中〜出産後にDVが起こりやすいことが分かりました。

 

現状では、DV防止法(配偶者からの暴力及び被害者の保護等に関する法律;現在三次改正)の施行を筆頭に、婦人相談所や児童相談所などの連携のもと、全国に相談窓口やシェルターがつくられるなど、「DVが起きた後」の女性や子どもへのケアは年々充実してきています。しかしその一方で、夫の暴力から命がけで逃げ出す母子は後を絶たず、関係機関への相談件数も増え続けています。また、加害者である「暴力をふるった夫への介入」がなかなか進まないことも現在の課題です。なぜDV加害者になってしまったのか。たとえば、幼いころからの性別役割分業に基づいた“男としての在り方”や社会からの“しがらみ”がDVを引き起こす原因の一つになっていたとしたら…?

 

そんなことを考えながら、数年社会経験を積んだ後、縁あってDV被害者支援の現場に携わる機会をいただきました。そこでの仕事は、電話相談の応対や、シェルターの運営、中高大学生間や若者の間で起こる「デートDV」防止の予防啓発授業などを中心に取り組んできました。電話の向こう側に居る女性や面会相談に起こしになった方は、全員悲しみや痛みに溢れていました。こんなにも多くの人が、傷ついている。苦しくても、パートナーを信じ“いつかまた幸せだったあの頃に戻れたら”という願いだけで生きている人がいる。当事者の「ギリギリの感情」と向き合う度に、DVや児童虐待の根絶には「被害に遭う前、悲しむ前段階でのサポート」が必要。負の連鎖を根底から断ち切るためには「未然に防ぐことへの打ち手」が必要という思いが強まっていきました。

 

ではその「打ち手」とは何なのか?

いろいろある中で私が注目したのは「母親」という存在。
そして「産前産後ケア」という福岡圏では馴染のない、全国では数都道府県・都市で取り組みがはじまった「母親にコミットした支援やサポート」でした。

ママの幸せを伴走しながら応援したい!!

多くの母親は、自分に限ってDVや児童虐待の被害者・加害者になるはずがないと思うことでしょう。
私も、できることならそうであってほしいと願っています。

しかし、産後のダメージは想像以上に過酷です。心身ともに万全な状態に回復しないまま育児(数時間置きにくる授乳やオムツ替え)や家事に取り組んでいると、ふとしたことがキッカケで、母親も父親も家族全体までもが負のスパイラルに陥り、そのままDVや児童虐待の被害者・加害者になってしまう可能性がある。この話は、「妊娠・出産・育児」に関わるすべての人に起こり得る話なのです。

 

だから、ママのケア=「産前産後ケア」が大切。

 

私は今、こうした問題意識を原動力に「産前産後ヘルパー」や「栄養学」「母体(女性)の心と体の変化」「子どもの発達」の学習、家族1人1人をトータルでサポートできる“ファミリーサポート”的な視点での「家族支援カウンセラー」の学習を進めています。具体的な支援活動は来年2016年の春からを予定していますが、少しずつ実地研修を積みながら、私だからできる母子サポートの在り方を模索していきたいと思っています。

 

出産“後”の女性と赤ちゃんにとって、ケアだけでなく母子を取り巻く快適な環境づくりを実現させる社会をつくりたい。産後ケアの重要性を多くの人に認知してもらい、日本における少子化対策、地域の子育て支援や児童虐待・DV防止に貢献できる活動にとりくみたい。

 

「ママが幸せだと、家族みんなが幸せになる」を信念に、母子サポートのソーシャルワーカーとして多くのママとご家族に寄り添えるよう、力を尽くしていきます。

過去の記事

おせっかい隊:高橋 雅子(たかはし まさこ)

福岡県出身。長崎の大学にて児童虐待やDV被害者支援など家族問題の学びを深める。卒業後は社会福祉士と精神保健福祉士の資格を活かし、障がい者・児の生活・相談・就労支援の現場と、DV被害者支援の現場に携わる。2013年より『世の中には多くの家族がいるけど、悲しい想いをする人をこれ以上誰一人と増やしたくない!』と決意。以降、家族支援カウンセラー(民間)・産前産後ヘルパー(ニチイ)、産後ケアリスト2級(日本産後ケア協会)、認定産後ドゥーラ(一般社団法人ドゥーラ協会)を取得。2016年春から、福岡市や近郊地域にて訪問型産前産後支援をスタート。同時に障がい児がいらっしゃるママ、心の病を克服しようと頑張っているママの在宅支援もスタートしている。『ママの笑顔が家族の笑顔』をモットーに、地域で母子をサポートするソーシャルワーカーとして奮闘中。

◼︎ブログ「ママの笑顔がみんなの笑顔 産後ドゥーラ兼ソーシャルワーカーたかはし」

◼︎一般社団法人ドゥーラ協会 認定産後ドゥーラ 掲示プロフィール