「赤ちゃんが生まれたら自動的に幸せになれる」というイメージが強い産後。しかし、産後2年間が最も離婚率が高い時期であることを、あなたは知っていましたか?

厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査結果報告(2016年)」によると、全体(死別を除く)の約4割が子どもが0〜2歳の時…つまり「産後2年以内」に離婚を決意。子どもが3~5歳の時に離婚した家庭を含めると、その数は全体の6割に達していたのです。

母子家庭になった時の子ども(末子)の年齢別状況

※死別を原因とした母子家庭の方は除く

子どもが幼く、可愛い盛りであるはずなのにどうして?と思う人もいるかもしれませんが、子どもの可愛さと夫婦関係の良し悪しは別物。むしろ子どもの誕生を機に夫婦間で考え方や行動に乖離が生じたり、それまで気にも留めなかったことが問題になるなど、溝を深めがちです。

背景にあるのは2012年にNHKの「あさイチ」という番組で提唱された「産後クライシス」という現象。産後2年以内に夫婦(特に女性側)の愛情が急速に冷え込むというもので、産後の妻のホルモンバランスの乱れや、夫の育児や家事への関わり方に妻が大きな不満を持つことが引き金になると考えられています。

※産後の妻のホルモンバランスの乱れ

妊娠中に大量に分泌されていた女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」が産後は急減します。その一方で分泌量が増えるホルモンが「オキシトシン」。これは子どもを守るために分泌されるホルモンで、育児に非協力的な人間に対して攻撃性を高める作用があるとも言われています。

ちなみに、ベネッセ次世代育成研究室が288組の妊娠中のカップルを対象に4年間追跡した「配偶者への愛」に関する調査結果によると、全体の74%の夫婦が、妊娠当初は「本当に愛している」と答えていたにも関わらず、子どもが2歳になる頃には夫婦ともにヒヤリとする結果に…!

特に妻の夫に対する愛情は子どもが0歳の時点で30%近く落ち込むなど、産後1年足らずで「愛情が急激に冷めていく」という恐ろしい状況が報告されています。

※出典:ベネッセ教育総合研究所 資料

ではどうすれば産後も良好な夫婦関係を築いていくことができるのでしょう?

夫婦の数だけ答えがあるものですが、今回は実際に産後クライシスを乗り越えてきたご夫婦へのヒアリングを通して見えてきたポイントを3つにまとめてご紹介します。

1、夫が「産前産後のリアル」に対する予備知識を持っている

妊娠出産によって妻の心と体がどのように変化していくのか?
夫婦間にどのような問題が生じやすくなるのか?

など、「夫」側が多少なりとも産前産後のリアルに対する予備知識を持っている場合、産後クライシスを早期に乗り越えているケースが多く見られました。

情報収集元は、テレビやインターネット、漫画「コウノドリ」を観て…という方もいらっしゃいましたが、圧倒的に多いのが、産婦人科や行政で開催している「両親学級や父親学級などの講座に参加して学んだ」という声。

自ら積極的に講座に参加したという夫さんばかりでは無いようですが、産前産後を知る第三者からのリアルな話を通じて、楽しいばかりではない育児の実態や妊娠出産における生命のリスクなどを知り、「夫ととして父親として何ができるか?」を考える機会を得ていたことが、いざという時の役に立ったようです。

妻だけでなく、夫も一緒に「変化を受け入れる準備」を行うこと。
それが、
産後の良好な夫婦関係の基盤に
繋がっていきます。

2、「産後の妻」を尊重する夫の存在がある

誰もが「母親になった自分」をすんなり受け入れられているか?というと、実はそうでも無いもの…。産後の妻たちの中には「自分のアイデンティティを見失うような感覚」に陥る人も少なくありません。

行く先々で「◯◯くんのお母さん」「◯◯ちゃんママ」と呼ばれることが増え、自分自身について語る機会が激減。子どもを中心とした話題に終始する中、自分が自分で無くなってしまったように感じたり、母親としての自分を肯定できずに違和感を募らせるケースは珍しくないのです。(夫にまで「ママ!」と呼ばれるようになり、落ち込んだという声も…)

また、産後しばらく(人によっては数年にわたって)は、「やりたいことが一つもできていない」「達成感がない」と感じる人も多いもの。

やりたいことの中には仕事復帰や資格取得、海外旅行など、準備や調整がそれなりに必要なものもありますが、大半は「ご飯を温かいうちに食べる」「お風呂に一人でゆっくり浸かる」「誰にも起こされずに思う存分眠る」「美容室に行く」など、産前までは当たり前にできていたことが中心。日常生活における「ちょっとしたこと」さえも思い通りに進めることができず、焦燥感やストレスを溜め込んでしまうケースも見受けられます。

このように、精神的なダメージを受けやすい状態にある「産後の妻」を前に、一番身近なパートナーである夫がどのような言動で接するか?はとても重要!

間違えても、「母親になったのだから我慢すべき」「◯◯さんの奥さんはもっと頑張っている」「俺の母親なら…」などと突き返さずに、「自分の妻の意思(妻の感情や考え)」を尊重した発言や行動を意識することが、一つのポイントになります。

ちなみに、尊重とは言いなりになるということではありません。
相手を大切に思うことであり、「思いやり」を持って接することです。

「自分の妻は、心身ともに傷つきやすい状態にある」ということを理解し、大切な人を大切にするためのコミュニケーションを重ねることができれば、産後も良好な夫婦関係を築いていくことができます。

3、「会話」だけでなく「対話」ができる夫婦関係がある

「対話」とは、価値観の違いを尊重し、互いに納得のいく結論を導き出していくコミュニケーションのこと。相手との間に理解や共感を積み上げながら、一つの方向性・目的に対して「わたしたちの答え」を見出していく前向きなやりとりのことを言います。

実際に産後クライシスや離婚を経験したことがある方々に話を伺うと「対話不足」が事態を深刻なものにしていったことがよくわかります。

日常的な「会話」はできても、大切な話ができていかなった。お互いが思い描く人生プランや、家事・育児・仕事など、現実に向き合った話をしてこなかった。不安や大変さなど、ネガティブな話に耳を傾けなかった。どうせ言っても意味がない、自分さえ我慢すれば…と自己完結してしまい、気持ちを伝えることをしなかった。

…など「互いのマイナスの感情をプラスに変えていくやりとり」「わたしたちの答えを見出すコミュニケーション」ができず、最悪の事態を迎えているケースが見受けられます。

産前産後の妻たちは、ホルモンバランスの乱れや体の疲れから感情的になりすぎたり、頭が回らなかったり、言葉が出辛くなったりすることもあります。また、夫たちの中には、こうした妻の状況に寄り添いながらコミュニケーションを重ねることが苦手な人も存在します。それ以前に、産後・育児期は夫婦ともに疲弊し、話し合う気力が枯渇しているケースもあります。

それでも、この時期に臭いものに蓋をしてひとりで抱え込む(抱えさせる)のはNG

たとえマイナスの感情であっても、互いの感情に寄り添いながら、ちょっとした事から大切な事まで夫婦で考え、話し合い、決めていく。辛い・大変・苦しい時ほど、一緒に乗り越えていく意思を確認し合うつもりで「対話」ができれば、産後も良好な夫婦関係を築いていくことができます

もとより、別々の人生を歩んできたふたりです。

夫婦のどちらかがエスパーでもない限り、「夫婦だから、家族だから」という理由だけで、全てを理解し合えることはまずありません。特に、夫婦・家族のカタチが変わるタイミングはお互いの価値観や優先順位も変化するもの。何かにつけて「これまでと同じ」と思い込まずに、互いに気づかぬうちに変化している可能性を考慮しながら、新しい夫婦関係を築くつもりで「対話」を重ねていくことができたら心強いですね。

目指すは「対話を楽しめる」夫婦関係

産後すぐにはじまる、赤ちゃんのお世話。それは、一人の人間を産み育てる大仕事ともいえます。

命の重みをひしひしと感じながら、数時間置きに授乳とオムツ替えを行う日々。夜泣き対応で寝不足な体に鞭を打ち、腫れ上がるおっぱいの痛みに耐えながら掃除や洗濯、料理などの家事にも取り組んでいく日々。そうした「産後」に夫と妻が互いを信頼し協力し合えるかどうかで、夫婦の未来は大きく変わります。

離婚は回避できても、セックスレスや互いへの憎しみの感情へと発展することがないように。夫婦の間に深い爪跡を残し、仮面夫婦を演じ続けるようなことがないように。初動を甘く見ずに夫婦で向き合える関係性を築くことができると良いですね。

また、今この記事をご覧いただいている方の中で「産後クライシス真っ只中…」「話し合うキッカケすら掴めない…」という方は、弊社で発行している夫婦会議ツール「夫婦で産後をデザインする 世帯経営ノート」の活用や、夫婦会議の各種講座・実践会への参加もご検討ください。

「何も話したくない!」「今更何をどう話せば良いかわからない」「目を見て話しができない」など、深刻な状況にある方もいらっしゃるかもしれませんが、そうしたネガティブな感情を乗り越えてこそ、夫婦・家族の信頼関係は深まります。

何より、家庭は社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのものです。私たち親が思う以上に、子どもは夫婦関係をよく見て記憶しています。

縁あって結婚したおふたりがいつまでも幸せな関係を築いていけるように。
そして、ご両親としてお子さんにより良い家庭環境を築いていけるように。

いそがしい日々の中でも「ふたりで向き合ってゆっくり対話する時間」をどうか大切にしてください。

産後の危機を乗り越えて「対話を楽しめる夫婦関係」「前向きな答えを導き出せる夫婦関係」を育んでいけますように。ご夫婦ご家族の幸せを、心から願っています!

『夫婦会議®︎』をはじめてみませんか?

『夫婦会議®︎』とは、
人生を共に創ると決めたパートナーと、
より良い未来に向けて「対話」を重ね、
行動を決める場のことです。

 

自分ひとりの意見を通すため、相手を変えるために行うものではなく、「わたしたち」で答えを創るためのもの。

特に育児期においては、わが子にとって、夫婦・家族にとって「より良い家庭環境」を創り出していくことを目的に行います。 

家庭は社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのもの。『夫婦会議®︎』は、ちょっとしたことから大切なことまで、前向きな気持ちで「対話」できる家庭環境づくりを応援します。

 

※『夫婦会議®︎』は、Logista株式会社の登録商標であり、日本初の「夫婦の対話」メソッドです。模倣サービスにご注意ください。
※『夫婦会議®︎』のツール・サービスは、“対話”によるコミュニケーションを重視しており、他に「キャリアデザイン/子どもの発達・成長/産後ケア/周囲との結びつき」などの観点を用途に応じて織り交ぜ開発しています。