子は鎹(かすがい)
夫婦仲が悪くても、子への愛情のおかげで夫婦の縁を切らずにいれるということ。 子が夫婦の縁を保ってくれるということのたとえ。 「鎹(かすがい)」とは、材木と材木とをつなぎとめるために打ち込む、 両端の曲がった大きな釘のこと。
異なる材木をつなぎとめる役割を担う「鎹(かすがい)」。これを元にした「子は鎹(かすがい)」ということわざは、子どもの存在が夫婦関係を保ってくれるという意味で一般に使われています。
しかし物心ついたときに両親から「本当は別れたかったけど、あなたがいたから…」などと言われた子どもはどう感じるでしょう?
「両親を離婚の危機から救った!」とポジティブに解釈する子もいるかもしれませんが、一方で「自分がいなければ、両親は自由に生きられたのに」と思ってしまう子がいないとも限りません。夫婦といえども元は他人。分かり合えずに衝突したり、心がすれ違うような場面もあるもの。しかしそうした夫婦の危機を「子どもがいるから」という理由だけで乗り越えようとするのは実は危険!長い目で見たときに、夫婦関係だけでなく、親子関係にまで「しこり」を残し兼ねません。
では一体どうすれば・・・?
今回は「子だけ鎹(かすがい)状態から抜け出し夫婦で向き合うためのポイント」を3つのステップにまとめてご紹介します。
子どもを盾にするのをやめる
夫婦仲がこじれてしまった時に最も避けたいことは「子どもを盾にする」ということです。「子どもが生まれたばかりだから」「子どもがいるから」と、事あるごとに子どもを盾にしていては、いつまでたっても問題は解決しません。何より子どもは親の所有物ではありませんし、いつかは巣立っていく存在・・・ですよね。子どもには子どもの人生がある中で、自分たち夫婦の関係を繋ぎとめるような大役を背負わせておいて良いのでしょうか。
更に、子どもを理由にした状態は、問題をうやむやにするだけでなく、パートナーの自尊心まで傷つけてしまう可能性があります。間違っても、言い争いの中で「夫婦関係が破綻しても、子どものために我慢して一緒にいる!」などの暴言を吐かないようにしましょう。(筆者は勢いに任せてパートナーに言ってしまったことがあります。仲直りはできたものの、大反省!)
親の私たちが思う以上に、子どもは夫婦関係をしっかり見ています。両親が揃っているから幸せというわけではなく、「両親の間に愛情や信頼関係を見ることができるから」子どもは幸せを感じることができるのです。
また、「夫婦だから」「家族だから」という関係性に頼るのも賢明とは言えません。
そもそも生まれも育ちも異なる二人です。価値観や優先順位の違いはもちろんのこと、一緒に暮らしていく中で、当然ながら意見が食い違う場面も出てきます。何もかも100%自分と一致するということは、まず無いと思っていた方が良いでしょう。
とはいえ人間は感情の生き物。一度親密な間柄になると「言葉にしなくても分かり合える」という期待が膨らんでしまうんですよね。その分、ちょっとした行き違いから怒りや落胆の気持ちに発展もしやすいのかもしれません。
しかし、そんな時こそ冷静になって思い出してください。
「夫婦といえども元は他人」
私たちは、両親(パパ・ママ)という関係性以前に、夫と妻という関係であり、一人の男と一人の女です。夫婦間で生じた問題は「夫婦の関係性」の中に解決の糸口が存在します。問題の本質は、子どもではなく「夫婦という人間関係の中」に存在しているのです。
平日に「16分」で良いから二人きりの会話を楽しむ
さて、夫婦の間に生じた問題に向き合う気持ちが整ったら、次は「夫婦二人きりで会話をする時間」をつくってみましょう。この先も二人が愛情と信頼で結ばれた夫婦であるためには、日頃からお互いの気持ちを伝え合える関係性を築くことが大切。そして、その関係を維持発展させていく努力が必要です。
平日に毎日平均16分会話が増えるだけで夫婦間の満足度が上がるという調査結果があるのをご存知ですか?
シカゴ大学の山口教授の研究結果によると、夫婦の会話が平日に16分増えると、月収10万円分の満足度が得られるとのこと。10万円に対する価値観がさまざまという中で、どれほど「幸せ」に感じられるのかは分かりませんが、夜寝る前の16分だけでも二人きりで会話をすることができたら、なんだか素敵な夫婦の時間になりそうな気はします。
しかし中には「16分もの間、何を話せば良いかわからない!」「話していてもすぐケンカになる!」という方もいるかもしれませんね。
そんな方は、「楽しかったことや嬉しかったこと」など、プラスの感情を思い起こすことからはじめてみましょう。どうしても思い浮かばなければ、相手に「今日は何か楽しいことはあった?」と尋ねてみても良いかもしれません。そのほか、我が子の成長を感じた瞬間などから話し始めるのも良いですね。キッカケは子どもの話でも16分の会話が終わる頃には、お互い別な話題を持ち出している可能性だってあります。
いずれにしても、お互いが居心地の良い空気をつくることを意識しながら「会話を積み重ねていくこと」が肝心。たったの16分も、毎日積み重ねればそれなりの時間になります。その積み重ねが、夫婦の関係性に絆や自信を取り戻してくれるはずです。
one point 〜こんな時どうする?〜
万が一、相手が話を聞いていないと感じたり、相手が持ち出す話題に興味が持てなかったとしても、すぐに怒ったり、会話を諦めたりしないでください。「二人で話す時間を楽しみたい。二人の時間を大切にしたい」という気持ちで共通の話題を探していくこと。それが重要です。
また、嫌な雰囲気のまま会話が途切れると、二人で話す時間そのものへの印象が悪化します。どんな会話の流れになっていたとしても話の終わりには「今日は話せてよかった。ありがとう」と笑顔で伝えてください。それだけで、次に繋がります。
会話から「対話」へ・・・不満や不安も、隠さず伝える
「子どもを盾にしない」「毎日16分で良いから夫婦二人きりで会話を楽しむ」ここまでできたら、ゴールは目前!
最後は、「会話(たわいもないおしゃべり)」を楽しむ関係から、「対話(価値観の違いを尊重し、納得のいく結論を導き出すコミュニケーション)」ができる関係に向けてステップアップ!
気になっていることを相談したり、不安や不満も隠さず伝えたり。
夫婦間で気持ちや考えを定期的に擦り合わせていきながら、「大切なことを話し合っていける夫婦関係」を築いていきましょう。
ここで一つ質問をしますね。
あなたはパートナーに不満や不安がある時、我慢をしてしまうタイプですか?
それとも、躊躇せずに伝えられるタイプですか?
我慢をしてしまう人は・・・
もしあなたが「我慢」をしてしまうタイプであれば、今すぐ自分を変える努力を始めることをオススメします。一番身近で生涯を共に歩むと決めた相手に対して、自分の感情をきちんと伝えられるようになること。これはとても重要なことです。
なぜならあなたが我慢を積み重ねる中で、自分とパートナーの間に「タブー」が生まれ、それが更なる不満や不安の温床になってしまうから。更に、我慢をするということは、暗に気持ちを隠しているということにもなります。「言えば喧嘩になる」「気まずくなる」と思ったとしても、それを口にする勇気を持ってください。ネガティブな感情を乗り越えていかない限り、「夫婦の信頼関係」を深めようがありません。
また、人は「心が健全な状態(不満や不安から解き放たれ、安心感が得られている状態)」でなければ幸せを感じることができません。自分が幸せでない中で、パートナーを幸せにすることなどできるでしょうか。また、逆にパートナーが言いたいことを我慢しているような状態で、あなたは幸せを感じることができるでしょうか。
楽しいこと、嬉しいこと、良いことだけでなく、嫌なこと、悲しい事、悪いことも共有し、互いに意見を交わしながら共通認識をつくっていく。そうした本音を語り合える夫婦関係を築けた先に、「私たちだからこそ描ける幸せ」が待っているのだと思います。
躊躇せずに伝えられている人は・・・
一方で「躊躇うことなく」伝えられるタイプの方で、「いつも険悪なムードになる」「喧嘩して終わる」というようなことがあれば、不満や不安を伝える際の自分の言動や場の雰囲気を見直してみると良いかもしれません。
・一方的に責めるような口調になっていないか
・見下しているような言い方をしていないか
怒りの感情任せになっていないか
・相手にも話す余地を与えているか
・高圧的な態度になっていないか
そもそもネガティブなことを言われて嬉しい人はそんなにいませんよね。それが、自分にとって一番身近で味方であるはずの人からの指摘であれば、なおさら面白くなかったり・・・。こちらの伝え方に関係なく「言ってくれてありがとう」と素直に受け止めてくれることばかりであれば良いですが、指摘を冷静に受け止められる人の方が稀なのではないかと思います。
だからこそ、ネガティブな感情ほどできるだけ冷静になって、柔らかな口調と態度で相手に伝えることが大切。
また、一方的に不満や不安を伝えるだけでなく、相手にも同じように何か気になっていることがないか、こちらから尋ねる余裕も持てると良いですね。
そうして対話を重ねる中で「自分にも原因があった」と分かるようなことが出てくれば、その時点で素直に「ごめんね」の気持ちを伝えましょう。最後にはお互い「ちゃんと聞いてくれてありがとう」「正直に話してくれてありがとう」と本音のやり取りを労いあう一言を添えられたら、もう完璧です!
「鎹(かすがい)いらずの夫婦」になる
ここまでに「子だけ鎹(かすがい)状態から抜け出し夫婦で向き合うためのポイント」を3つのステップにまとめてご紹介してきました。
ここに挙げた3つのポイントは最低限の内容ですが、もしも現状の夫婦関係が「子ども頼み」になっている…という心当たりがある方は、自分たち夫婦の未来のためにも子どものためにも、これを機に状況を変える具体的な行動をはじめてみていただけたらと思います。
そうして子どもが巣立つ時には、「鎹(かすがい)いらずの夫婦」になっていられたら素敵ですね。そんなご両親の姿を記憶に残して、お子さんもまた、希望を持って自分の家族をつくっていくようになるのではないでしょうか。
わが子により良い家庭環境を創り出していくためにも。
一番身近なパートナーであるご夫婦の関係が、一層充実していくことを願っています。
「夫婦会議」を始めてみませんか?
「夫婦会議」とは、人生を共に創ると決めたパートナーと、より良い未来に向けて「対話」を重ね、行動を決める場のことです。
自分一人の意見を通すため・相手を変えるために行うものではありません。「わたしたちとして、どうするか?」を考える場。特に育児期においては、わが子にとって、夫婦・家族にとって「より良い家庭環境」を創り出していくことを目的に行います。
家庭は社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのもの。大切なことを前向きな気持ちで対話していける夫婦であるために、新習慣として取り入れてみませんか?
▼「夫婦会議」についてもっと詳しく知る
https://www.logista.jp/fufukaigi/
※「夫婦会議」はLogista株式会社の登録商標です。